【雑考】1990年代ブーム?
先日、本屋で雑誌を立ち読みしていたら、『ミュージック・マガジン』2010年5月号が、オザケンこと小沢健二の特集を組んでいました。
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- アーティスト: 小沢健二,スチャダラパー,服部隆之
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渋谷にタワーレコードができたのが、確か1980年代に入った頃。その後、HMVやWAVEといった大型輸入レコード店が次々に渋谷にオープンします。これまでなかなか買えなかった洋楽レコードが割と安価に簡単に手に入るようになり、やがてCDに替わっていきます。そして、そんな英米仏から入ってきた音楽を日常レベルで聴き込んだ人たちが、いわゆる歌謡曲とは違う、これまでになかった新しい音楽を作り始めます。1990年代に入り、いよいよバブルが絶頂期を迎えると、渋谷という街の雰囲気も大きく変わっていき、表面はガキの街になっていくものの、いわゆる「渋谷系」と呼ばれるとっぽい感覚の人たちを中心に新しい若者文化(ある種のレコードおたく的な文化)が生まれてきます。その中心になったのが、ピチカート・ファイブ(小西康陽!)、オザケンのいたフリッパーズ・ギター(先日、CDが再発されました)やカジヒデキ(カジくん!)、カヒミ・カリイ(大好きでした)、クルーエル・レコードなどのインディ・レーベル。
興味深かったのは、日本人でありながら、英語やフランス語の歌詞で唄うラブ・タンバリンズやカヒミ・カリイ。購買層は日本人中心で、おそらくは歌詞の内容がわからないのに、なぜ、外国語で歌うんだろうか?と不思議に思いました。しかも、ラブ・タンバリンズのellieの英語は素晴らしい黒人英語だったけど(ネイティブも日本人とは思わなかった)、フリッパーズ・ギターのファースト・アルバムの英語はひどかった…。なんだか、ふわふした感じの浮遊感が共通した感覚だったと言えそうです。「浮遊感」といえば、フィッシュマンズもよく聴きました。
なぜ、この不況の時期に、バブル期の文化を流行らそうとするのか? 果たして、今の若い人たちに、渋谷系と呼ばれたミュージシャンたちの「浮遊」する音楽は理解できるのでしょうか?
なんてことを考えていると、村上春樹がデビューしたときの感じと、渋谷系が出てきたときの感じが似ていることに気づきました。村上春樹は、初め、いわゆるハードボイルド(探偵小説の乾いた硬質な文体)を真似たといわれるスタイルだったため、出てきた当時には賛否両論でした。現在の大物ぶりからは想像できませんが。そのためか芥川賞もとっていません。外国文化のスタイルを咀嚼することなく直接的に日本に移植してくるというやり方のはしりが村上春樹だったといえるのかもしれません。「渋谷系」の音楽とスタンスは似ていると思います。
1990年代の文学では、アメリカの短編小説を中心に、ミニマリズムというスタイルが流行ります。大きな物語ではなく、身の回りの些細なことを細々と書いていくこのスタイルは、例えば、ヘミングウェイなどに代表されてきたアメリカ小説のイメージを大きく変えるものでした。私小説の伝統のある日本では受け入れられ、たくさんの作品が翻訳されました。私もかなり読みましたが、結局、あまりにも内向きすぎるせいか、一時的なブームのように、いつの間にかほとんどの作品が消えていってしまいました。今でも残っているのは、村上春樹がらみのレイモンド・カーヴァーくらいでしょうか。共通していたのは、大学にクリエイティブ・ライティングのコースができて、作家になるための勉強を大学でするようになったという背景があるようです。いわゆる魂の告白のような大がかりな作品ではなく、技術で「しみじみ」としてちょっとした話を書いたものへと変わっていったといわれています。
その頃、もうひとつの新しい感覚の小説としてもてはやされたのが、ジェイ・マキナ二―。ニューヨークを舞台に、新しい感覚の若者を描いたということで一気に有名になりました。
- 作者: ジェイマキナニー,Jay McInerney,高橋源一郎
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でも、90年代の感覚が違った文脈ででも戻ってくるのであれば、それが2010年の今の感覚でどのように解釈されるのか…。特に大学生の世代が、こういった音楽や文学作品を聴いたり読んだりすると、どう感じるのか、非常に興味があります。ぜみ、みなさん、試してみて、感想を聞かせてください!