【エッセイ】あなたがイングランドで一番だと思うものは?

Kさん、確かにチケットは高いですね。オペラとかもそうですが、舞台のセットにお金がかかる場合にはどうしても高くなるようです。私も学生時代に小劇場ブームがあって時どき出かけてましたが、2,000円以内だったの行けたのだと思います。今回の舞台については、また報告しますね。
さて、後期の英語講読の授業でテキストとして使ったのが下記のエッセイ集。題して、『私がイングランドで一番だと思うもの』となるのでしょうか。

Icons of England

Icons of England

ブログにもコメントを寄せてくれている夏雄さんに教えてもらったもの。各界の著名人がイングランドを象徴すると考えるものをひとつとりあげ、それについて書いたエッセイを集め、それが長くとも3ページくらいで、ちょうど90分で二人が担当すればよいかな、と思ってテキストに選びました。文章の硬軟に差があることと、テーマがすっかりマニアックになってしまっているので、あまりイギリスに興味がないとつならなかったかもしれません。できるだけ話は広げていきましたが。少し反省。
本書のテーマは本当にいろいろ。風景、郵便ポスト、果樹園、化石、スポーツ、動物…テーマは本当にいろいろ。自分にとっての「イングランド」が次々に出てきます。文章を書きなれた人のものは読みやすく、おそらく書き慣れていないのか、ちょっと読みにくい文章もあります。でも、そこがまた本書のよいところでしょう。この人はきっと口下手なんだろうな、と思わせる寡黙な感じの文章もあって、書き手の個性がよく出ています。
読む前から予想できましたが、多くの寄稿者が古き良き時代のイングランド(例えば、自分の子ども時代など)に思いを馳せながら文章を書いています。便利になっていく世の中に満足はしているんだけど、やっぱり、ちょっと違うかな、という感じ。また、面白いなと思ったのは、理想と現実との調和のとり方。例えば、イングランドの緩やかな丘の風景について書いている人は、風力発電の巨大な風車のことをもちろ批判しています。でも、そのトーンは過激なものではなく、相手の反応を伺うような、様子を見ながら本音を少しだけ見せる、そんな感じ。しかも自分でもエコをとるか、昔ながらの風景を守るのか、結論は出せないような。でも、穏やかな調子で書かれているんですが、きっと内には熱いものがあるんだろうな、とわかってきます。
編者は、以前にこのブログでも触れたビル・ブライソン。アメリカ人の見たイギリスの旅行・滞在記を書いた人。序文を寄せているのがなんとチャールズ皇太子。そのチャールズ皇太子も書いていることですが、イングランド人でないブライソンによってこういう本が企画・出版されるというのは面白いと思います。いや、むしろ、イングランドで生まれ育っていないからこそ、見えてくるものがあるのかもしれません。
本書の売り上げはすべてCPRE(Campaign to Protest Rural England)という団体に寄付されるそうです。イギリスが好きな人は、ぜひ、この本を買ってください。