【雑誌】『web英語青年』を紹介します、その2

こうして、現在はインターネットでいろいろな情報を得ることができ、確かに、便利になりました。しかし、あくまでもモノとしての本や雑誌の手触りや匂いが好きな者としては「それだけでいいのか」というのが、常々感じていることでもあります。以下は、そういう本フェチの戯言(?)を書いてみます。長くなりますが、最後まで読んでもらえると嬉しいです。

『英語青年』は、現在はこうしてインターネットのホームページ上での刊行になっていますが、かつては月刊誌という紙媒体で刊行されていました。英文学科のある普通の大学図書館では必ず購読していたはずですので、バックナンバーを検索してください。下記のものが最終号です。

英語青年 2009年 03月号 [雑誌]

英語青年 2009年 03月号 [雑誌]

この雑誌は、その時々に話題になっているテーマの特集を組み、短いながらも興味深い論考が収録されていました。また、若手研究者が担当する「海外新潮」では、英米を中心とした新しい研究書が紹介されていましたし、書評だけでなく、「新刊書架」のコーナーでは主だった翻訳書・研究書が紹介されていました。

教養主義的すぎるとか、俗物的エリート主義的だとか、井の中の蛙のように内向き(国内向きですね)すぎるとか、確かにいろいろと批判はありました。

でも、例えば、日本オースティン協会が創設された2006年の5月号では「特集:ジェイン・オースティン」が組まれるなど、伝統のある雑誌ながらフットワークの軽いところも魅力的でした。特集号の目次を見ると、専門家だけでなく、広い領域からオースティンについて論じようとしているところや執筆者の活動地に偏りがないようにするなどの配慮もあり、編集者のバランス感覚の素晴らしさが感じられるもので、5年が経った今でもバランスのとれた特集だと思います。

また、私も共訳したヘンリー・マッケンジーという18世紀のイギリスの作家の小説『感情の人』(音羽書房鶴見書店)が出たときには、すぐに書評で取り上げてくれました。

感情の人 (松山大学言語・情報センター叢書)

感情の人 (松山大学言語・情報センター叢書)

「感傷小説」の代表的な作品として専門家には必読ではありますが、一般にはマイナーなこのような小説について書評で取り上げてもらえるなんて、と感激したことを今でもよく覚えています。
また、京都大学名誉教授の岡照雄先生に書いていただいたこの書評は、誤訳の指摘などもありましたが、すぐれた書評の書き方のモデルとしてすごく勉強になったことを感謝しています。

この書評の載った上記の2009年3月号でもって、月刊誌『英語青年』は110年(‼)の歴史をひとまず閉じて、休刊することになりました。このことは、大学で英語や英文学の教育に関わる者として、「文学離れ」とか、「英文学科への逆風」とか、そんなことはどうでもよくなるくらいの大きなショックでした。すぐれた編集者によって支えられていた雑誌だっただけに失ったものは大きすぎると思います。

休刊は売り上げの落ち込みが理由であることは容易に想像でき、英文学科の学生はもとより、大学で英語を教えている教員たちが自分で買わなくなったことが大きな原因だったようです。
もちろん、図書館へ行けば読めるのですが、一般誌と違い、読者層が限定されてしまう専門誌の場合には、やはり定期購読のかたちで読者がその雑誌を支えていかないといけないと改めて感じ入りました。

特に、地方に住んでいる場合には、なかなか身近なところで研究情報が入って来ないので、毎月、この雑誌は大切な情報ソースになっていたはずです。
その意味でも、ぜひとも、月刊誌とはいわないまでも、季刊誌でも構わないので早く復刊して欲しいと強く願っています。現在、復刊に向けて風を起こそうという動きもあるようで期待しています。

まずは、みなさん、『web英語青年』を読みましょう。