【雑考】先生、リスたちが桜の花を食べています!

まだまだ寒い感じの日が続いていますが、桜の花の方はそろそろ満開に近くなっています。満開の桜の花を見ると思い出すのが、坂口安吾の『桜の森の満開の下』。見事に咲いた桜の木の下には本当に死体があるのでしょうか。

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

場所柄のせいか、自宅近くにはたくさんの桜並木があります。今日、肌寒い中を家族と桜並木を散歩していると、上から桜の花びらがひらひらと落ちてきました。風もないのに、と思いながら見上げると、数匹のリスが必死で桜の花びらを食べているところ。リスって、桜の花びらを食べるんですね。

そういう光景を見て思いだしたのが、非常に印象的な以下の本のこと。いつも新聞に広告が出ているのを見て、読んだことはないのですが、気になっているものです。鳥取環境大学のキャンパス内での動物の珍エピソードが紹介されているということですが、このタイトルの付け方は絶妙ですよね。ついつい手にとってみたくなり、ときどき、ふと思い出してしまうのは私だけでしょうか。大学としても、このセンスには見習うべきだろうと思います。

先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学

先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!―鳥取環境大学の森の人間動物行動学

先生、シマリスがヘビの頭をかじっています! 「鳥取環境大学」の森の人間動物行動学

先生、シマリスがヘビの頭をかじっています! 「鳥取環境大学」の森の人間動物行動学

先生、カエルが脱皮してその皮を食べています! 鳥取環境大学の森の人間動物行動学

先生、カエルが脱皮してその皮を食べています! 鳥取環境大学の森の人間動物行動学

翻訳本の場合も、タイトルの付け方というのは非常に大事だと思います。
よく授業のときに例に挙げるのですが、アメリカの小説家J.D.サリンジャー(とうとう亡くなってしまいました)の"Catcher in the Rye"。これをどう訳すか。一番最初の翻訳タイトルは『ライ麦畑の捕手』(英潮社)。そう訳したのは、私の恩師のひとりでもある繁尾久先生(ご専門は中世英文学)。日本で一番馴染みがあるのは、おそらく野崎孝訳の『ライ麦畑でつかまえて』(白水社)。一番新しいのが村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(白水社)。みなさんはどれが一番だと思いますか?
繁尾訳は確かに間違ってはないけど、これでは何だか野球小説のようで、あまり売れそうにないですよね。村上訳も、著作権の問題もあったようですが、カタカナだけでは雰囲気が出ない感じが。そもそも、どういう意味かタイトルだけではわかりにくい。そうなると、日本語での翻訳の場合はやっぱり野崎訳のタイトルとなるのでしょうか。

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

同じことが、たとえば、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』をはじめ、多くの翻訳にいえるようです。翻訳タイトルについて考えることも卒業論文の面白いテーマになると思います。誰かやってみませんか?