【学会情報】ミステリーのシンポジウムが開かれます。

ようやく涼しくなってきた感じで、腰を据えて本でも読んでみようという気持ちになってきます。そう思うと、後期が始まってしまいました…。そんな読書の秋に読むべき本を教えてもらえそうな学会情報を紹介します。日本ウィリアム・フォークナー協会の第13回全国大会で面白そうなシンポジウムが開かれます。
「なぜ、お前がアメリカ南部を代表するフォークナーを…?」という声が聞こえてきそうですが、実は私は隠れフォークナーのファンなのです。実は別に隠れている訳ではないのですが、尋ねてくれる人もいないので声高には言っていないだけです。フォークナーといえばやはり「ヨクナパトーファ」モノですが、『サンクチュアリ』や『八月の光』などの重厚な作品も面白いのですが、一番好きなのは『死の床に横たわりて』でしょうか。

死の床に横たわりて (講談社文芸文庫)

死の床に横たわりて (講談社文芸文庫)

ただ、わざわざ学会に出かけようと思ったのは、今大会のシンポジウムが、フォークナーそのものではなく、どうやら「ミステリー」について広く扱うであろうと思われること。パネリストの四名のうちのお二人はフォークナーの専門家だと思いますが、東京都立大学名誉教授の小池滋先生と京都大学の佐々木徹先生はイギリス小説のご専門。初め、佐々木先生から「フォークナー協会のシンポジウムに出る」と聞いたとき、「何でですか?」と思わず聞き返してしまいました。そして、テーマが「ミステリー」と聞いて大いに納得。小池先生といえば、シャーロック・ホームズの翻訳全集(ちくま文庫)の監修をされているし、佐々木先生もやはりウィルキー・コリンズ傑作選(臨川書店)の監修者。イギリスの探偵小説といえばホームズでしょうし、コリンズもイギリスのミステリーの伝統の端緒を飾る作家のひとり。このように、お二人はイギリスの推理小説には特に詳しいだけでなく、日本を代表するディケンジアン(ディケンズ研究家)でもあります。ディケンズの作品においても「ミステリー」はとても重要な要素となっています。これは絶対に面白い話を聞くことができるはず。イギリスの探偵小説やミステリーの醍醐味を伺えるだけでなく、イギリス小説についても大いに勉強になると思います。例えば、オースティンの『エマ』にもミステリーの要素があるし、シャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』でさえ謎解きが鍵となる場面もあります。イギリスの小説には「謎解き」は欠かせないことを考えると、「ミステリー」という視点が重要なものとなってくることは間違いありません。また、特に小池先生のお話を伺うことができる貴重な機会となると思います。
以下にプログラムを転載しておきます。金曜日ではありますが、一般参加もできますので、都合のつく人はできるだけお出かけください。私も、申し訳ないのですが、この日は休講にしてでも聞きにいこうと思います。


〈日本ウィリアム・フォークナー協会第13回全国大会プログラム〉
※ 一般の方のご来聴を歓迎いたします

【日時】 2010年10月8日(金)
【会場】 中央大学駿河台記念館 6階 610号室

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【研究発表】(午前10時00分)司会:大地真介 (広島大学)
1.「もう一つの消えた声 ―― The Sound and the Fury における父の慈愛」 鈴木愛美(日本大学[学部])
2.「南部のVirginityをめぐって ―― NewmanのKatherineとFaulknerのCaddy」 松井美穂 (札幌市立大学)
3. 「Tales of "Darkness Fringed with Light": Unmastered Women in Faulkner, McCarthy and Morrison」Taras A. Sak (九州大学)

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【総会】(午後1時10分)

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【シンポジウム】(午後1時30分)「フォークナーとミステリー」
司会・講師 東京薬科大 大野真氏 「ミステリーの中でのフォークナー」
講師  東京都立大学名誉教授 小池滋氏 「1920, 30年代のイギリス・ミステリー」
講師  京都大学   佐々木徹氏「推理小説の伝統とフォークナー」
講師  神戸女学院大学 三杉圭子氏 「フォークナーの南部とドス・パソスの合衆国」