【ブックガイド】京都の本屋さんより届いたブックガイド

みなさんは、どのようにして読む本を選んでいますか? 授業中に紹介された本、レポートを書くのに調べていたら検索で出てきた本、あるいは恋人や友達が教えてくれた本…。パターンはいろいろだと思いますが、結構、便利に使えるのが「ブックガイド」と呼ばれている、本を紹介した本。時どき、知らなかったものを教えてくれることもあり、僕も重宝して使っています。
「ブックガイド」を使うときのコツは、自分の好みや感性に合ったものを紹介してくれるのかどうか。そうでないと、なかなか面白い本に出会うことはありません。世の中にはたくさんの「ブックガイド」が出回っていますが、まずは信頼できる書き手を見つけることができるのかどうかが重要になってきます。では、どうやって見つけるのか。これが難しいのですが、例えば、エッセイやブログなどを読んでみて、自分の感覚にグッとくるかどうかというのはひとつの判断基準になると思います。
僕の場合、何らかの意味で研究や授業に関係するものの場合は、極力、自力で探すことにしています。ただ、もちろん、研究者として信頼できると思っている人に紹介されたもの、あるいは、そんな人が書いた本や論文、そして研究発表の参考文献に載っているものは必ず入手して(買う場合も、図書館で借りる場合もあります)、少なくとも目次や索引は必ずチェックします。そうやって、自分に必要な情報を盗むようにしています(盗作じゃないですよ!)。
そうではなく、趣味で読む本の情報は「信頼できる書き手」のブログや「ブックガイド」で入手するようにしています。今回、紹介するのは、僕にとってのそんな書き手による「ブックガイド」です。

本を開いて、あの頃へ

本を開いて、あの頃へ

堀部篤史さんは、以前にもこのブログで紹介した京都の本屋さんの恵文社一乗寺店の店長さん。この本屋さんは、普通の本屋とは違い、棚の本の並べ方が有機的につながるような工夫がしてあり、同じ本でも普通の大型店にあるのとは違う印象を受け、新たな魅力を発見することができます。そんな本屋さんの店主なので、本についての知識は生半可なものではなく、ブログなどで紹介する本は隠れた魅力をたくさん持っているものが大半です。特に、僕はヴィジュアル関係に弱いので、彼のブログなどで面白いものをたくさん紹介してもらいました。
実は、フェリスの図書館に「英文学科」コーナーを作ってもらって、そこの書架を「生きた本棚」にしたいと考えています。図書館というのは、いわゆる機能性重視で本を並べるので、どうしても本同士の有機的なつながりはなくなってしまいます。言うなれば、倉庫にズラーッと本が並べられているだけ。これでは、探している本は見つかるものの、そこから何か面白い次の本を見つけるのは難しいのです。そこで恵文社一乗寺店の本棚を参考に考えたのが、本の並べ方を変えて、テーマごとにつながっている「生きた本棚」。例えば、『ハリー・ポッター』の隣には、プルマンの『黄金の羅針盤』を置き、その先には、ルイスの『ナルニア』などのファンタジーでつながる作品やヴィクトリア朝時代のファンタジーの研究書などを置く。その反対方向には、ケヴルズの『優生学の名のもとに』やダーウィンの進化論の入門書、あるいはカバントゥの『冒涜の歴史』など、一見、関係なさそうなものを並べていく。そして、なぜこれらの本が『ポッター』と関係あるのか、などを説明した手書きのポップを添えておく。すると、思わぬ方向に『ハリー・ポッター』がつながっていることが思いがけずもわかってくる、という仕掛け。ある本が、意外な広がりを持っていることがわかると、その本の読み方そのものも変わってくるものなのです。そんな本棚を作りたいと思っているのですが、これが意外に話が進まないんですね。たったこれだけのことなのに面倒な手続きが必要なようです。うんざり。
さて、今回の本で「ほほ〜ん」と思ったのは、帯の次の言葉。「本を開けばよみがえる、インターネットも携帯電話もなかった頃の記憶」。今の学生さんには想像できないと思うのが、インタネットや携帯電話のなかった時代のことではないでしょうか。
僕が初めてパソコンでインターネットを使うようになったのが就職して松山にいた頃のこと。就職して4,5年目だったと思うので、たぶん1995年頃でしょうか。これからは都市と地方の情報伝達の差がなくなる、なんて言われていました。携帯電話は使い始めて4年くらいでしょうか。最初は、完全に着信専用でしたが、段々と使いこなすようになってきました。それでも、今でもまだ、電話とメールしかしませんが。たった10数年しか経っていないのに、僕にも今ではこの二つがない生活はなかなか想像できません。
ただ、考えてみれば、僕の大学時代には二つともありませんでした。卒論はタイプライター、修論はパソコン、と執筆ツールは変わりましたが、まだまだパソコンは普及していませんでした。待ち合わせするにも携帯がないので、遅刻などすると大変でした。コンパの集合場所などは、遅れてくる人のために駅の改札を出たところにあった掲示版(黒板にチョーク!)に場所などを書き込みました。これが2時間で消されるので、さらに遅れる人がいたら、誰かが駅まで行って、もう一度、書き込むのです。すごく手間のかかる時代ではありましたが、待ち合わせをしている人がなかなか来なかったとき、イライラから段々と心配になってきて、ようやくやって来た相手の顔を見るとホッとしてイライラから解消されるときの感じとか、なかなかコンパに来ない仲間のことを心配しながらも次の飲み場所に移動する気分とか、携帯のある今ではなかなか味わえないでしょう。考えてみると、その頃の方が、携帯で簡単に連絡の取れる今よりも、人間関係はむしろ密だったのかもしれません。
なんてことを考えながら、そんな「ブックガイド」をぺらぺらとめくっています。この手の本は真剣に読むのではなく、ふと空いた10分とかにコラムをひとつ読みながら進めていくといいのではないでしょうか。みなさんも、そういう「信頼できる書き手」が見つけられるといいですね。
ちなみに、堀部氏には下記の「ブックガイド」もあります。こちらも、丁寧な人柄を察することにできる文章で書かれていて、ふとしたときに開いては数ページを読むことがあります。特にヴィジュアル本に興味のある人は読んでみてください。
コーヒーテーブル・ブックス ビジュアル・ブックの楽しみ方23通り

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堀部氏のほかには、松浦弥太郎氏(中目黒のCow Books店長兼『暮らしの手帳』編集長)の下記の「ブックガイド」もお勧めです。1.と2.が出ています。松浦氏には、アメリカの本屋さんのことやビート世代の詩人のことをいろいろと教わりました。
ぼくのいい本こういう本―1998‐2009ブックエッセイ集〈1〉

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さあ、みなさんも「ブックガイド」を片手に、自分にとっての一冊を探してみましょう。