【映画】詩人キーツの映画

なんともビックリですが、イギリスの詩人ジョン・キーツを主人公にした映画が公開されています。あの『ピアノ・レッスン』のジェイン・カンピオン監督の『ブライト・スター』です。
キーツはイギリスのロマン派を代表する詩人のひとりで、イギリス文学史などにも『エンディミオン』や「秋によせて」などの作品とともに必ず言及されています。同じロマン派のワーズワース、 コールリッジ、P. B. シェリーなどと違うのは、彼らがオックスフォードやケンブリッジなど一流大学を卒業したエリートであったのに対し、馬丁の息子であったキーツは大学を出ていないことです。そのためか、先の3人の詩を読むと、どうもロマン主義が実はエリートの視点から謳われた観念的な自然回帰であった感じがする一方、ある意味で、キーツだけが自然を自分の感覚で実感して作品を書いたように思えてきます。
しかしながら、幼い頃から貧しさや父親を亡くすなどの苦労をし、ようやく詩作に才能を見いだした青年が、結核のために25歳の若さで婚約者を残し死んでしまうとは、何とも人生のはかなさを感じさせられます。
映画のタイトルにもなった詩「輝く星」は1819年に書かれ、恋人のファ二ーに宛てた手紙に添えられたものとされています。下記に訳したものを添えておきます(http://poetry.hix05.com/Keats/keats17.bright-star.htmlより引用)。何とも切ないですね。

  北極星よ あなたのようにわたしもありたい
  夜空に高く 星々を従えて輝き
  眠りを知らぬ隠者のように
  まぶたを大きく見開いて
  永遠の波が渚をめぐって
  次々と押し寄せるさまを見続けていたい
  また山々や原野の上に降り積もった
  真っ白な雪の絨毯を眺めていたい

  いやもっと確かな命を生き続けたい
  いとしい人の豊かな胸を枕にして
  その胸が上下に揺れるのを感じ取りながら
  甘い欲望の中に永遠に目覚めつつ
  その息づかいを聞き続けていたい
  死んでしまうまでずっと そうしていたい

映画の情報は下記のホームページで。

http://www.brightstar-movie.jp/index.html

私はまだ観ていませんが、妙なラブ・ロマンスに堕してはいないと期待しています。