【研究書】イギリスの新しい小説を読む。
何についてもそうだと思うが、「新しいもの」には魅力があるとともに、それをどう判断すればいいのかを迷うことが多い。そもそも、「新しいもの」を追い続けるには相当なエネルギーが必要であり、いったん目を離してしまうと、いつも間にやら、すっかりわからなくなってしまっていたりもする。私のとっての“今”の小説はそんな感じで、ジュリアン・バーンズ、カズオ・イシグロ、イアン・マキューアンが話題になり始めた頃には熱心に読んでいたものの、いつの間にやら、19世紀の小説しか読まなくなってしまっていた。そんなところへ、今回、イギリスへ行ったこともあって、前にも書いたように、「“今”の小説も読まねば!」なんて危機感を感じたりもしたわけである。
九州に福岡現代英国小説談話会という研究会があって、話を聞くと、一貫してブッカー賞やその周辺の作品にこだわって読書会を開いているという。1975年以来というから、もう35年以上も続いていることに。このグループのすごいところは、その成果をきちんとかたちにして発表しているところ。数年前、その研究会は下記の本を出した。
- 作者: 吉田徹夫,福岡現代英国小説談話会
- 出版社/メーカー: 開文社出版
- 発売日: 2005/05
- メディア: 単行本
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- 作者: 高本孝子,加藤洋介,池園宏
- 出版社/メーカー: 開文社出版
- 発売日: 2011/11
- メディア: 単行本
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目次を見ると、名前は知っているものの読んだことのない作品がズラーッと並んでいて、自分の不勉強が痛感される。読んだことがあるのは半分くらい…。この本のよいところは、ブッカー賞の受賞作だけではなく、最終候補作についての割と詳しい紹介も入っているところ。受賞してしまう作品よりも、最終候補作の方が実は面白いのではないのか、とうのはよく言われること。このリストを参考に、名前を聞いたこともなかった作家の作品を調べて読んでみる楽しみもある。それにしても、これだけ研究会が長く続いているのは、やはり会の中心である吉田徹夫先生のご人徳によるところが大きいのだろう。そして何よりも、東京や関西ではなく、九州からこうした成果が発表されることがとてもうれしい。元気な九州、いいですね。
表題には「研究書」と分類したが、良質な「ガイドブック」でもあるので気楽に手にとって、面白い作品を見つけて欲しい。この2冊を読めば、“今”の「イギリス」小説の概観がわかります。