【文化】「映画で楽しむ〜」

Tくん、わかりますよ。書き込みをありがとう。学会の方はどうでしたか? ピューリタニズム学会は、エネルギッシュな先生方も多く、かなりレベルの高い研究を行っていると聞いています。また感想などを知らせてください。私も、最近、バニヤンをきちんと読み直そうと思っています。イギリスの小説を考える際、やっぱり重要な存在だと改めてわかってきました。

先日、友人のひとりが執筆に加わっている本書を送ってくれました。

映画で楽しむイギリスの歴史

映画で楽しむイギリスの歴史

映画を使ってイギリスの歴史を学ぼう、というもので、今の大学では重宝するのだろうと思います。かなり新しい作品まで、しかも割とこれまでは紹介されなかったようなものまで入っているので、私も参考にさせてもうらおうと思います。
ただ、「また映画か…」と思ってしまったのも事実です。最近、『映画で楽しむ〜』とか『映画で学ぶ〜』といった本がたくさん出されているような気がして、ちょっと調べてみました。アマゾンで検索してみても、ほかに下記の3冊をはじめ、かなりの数が出てきました。
映画でわかるイギリス文化入門

映画でわかるイギリス文化入門

映画で楽しむイギリス文学

映画で楽しむイギリス文学

映画で読むシェイクスピア

映画で読むシェイクスピア

なぜ、「映画」なのか。小説にしても、歴史書にしても、本を読むことは大変なことではあります。そもそも、文字で書かれたものを頭の中で映像化する能力が必要ですし、そのためのエネルギーも要します。映画であれば、文字を読むよりも楽ですものね。
ほかに、文学部英文学科が改組して、英米文化学科、国際文化学科、国際教養学科などに変わったこともあり、文学作品を教材に使いにくくなったという事情が垣間見れます。それだけではなく、英文学科でも、英文学を教えていくのに際して、映画は欠かせない教材になっているのも事実です。私自身、まずは映画を使ってイギリス小説に興味を持ってもらうようにしています。今年は、オースティンの『待ち焦がれて』(小説タイトルは『説得』)やシャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』という定番のほか、ディケンズの『オリヴァー・トゥイスト』なども使っています。もちろん、原作を、しかも英語で読んで欲しい、という思いはあります。ただ、自分が学部生だった頃を考えると、そうそう読めるものではなかったので、まずは導入と割り切って使うようにしています。
映画の中には、『恋に落ちたシェイクスピア』のようにすぐれた作品もありますが、前に紹介した『秘められた恋』のように、気をつけながら観るべき作品もあります。それを見極めていくには、上記のような本は多くの情報を提供してくれるでしょう。
ただ、映画を観てしまうと、それで作品をすべてわかったかのような気分になってしまうという問題があります。実際、数多く提出されるレポートの中には、映画だけを観てレポートを書いてあるものがあります。そういうものは、教員はすぐにわかりますからね。原作を読むことを求められた場合には、必ず読むようにしましょう。
ジェイン・オースティンは映画化によって一般の認知度が上がった象徴的な存在です。ただ、同時に、オースティンの小説の読者人口が増えたのかというと、どうもそうでもないらしい。多くの人が、映画で止まってしまっているようです。BBCドラマ『高慢と偏見』の見事なパロディである『ブリジッド・ジョーンズの日記』という小説と映画がありますが、その中の登場人物のひとりが確か次のように言っています。「原作を読んでいない人にはオースティンの映画を見せないような法律を作りましょう。」そうですね、映画はあくまでも導入、そこで興味を持った小説については原作を必ず読むようにしましょう。歴史については、せめて『歴史事典』を調べてみるとか。そうなってこそ、これらのガイドブックが十分に活用されたと言えるのだと思います。