【小説】子どもの頭の中をのぞいてみれば…

東日本大震災の影響で、首都圏の大学では学事歴の変更が相次いでいるようだ。フェリスも4月いっぱいは60分に短縮して授業を行うことになったし、非常勤@戸塚でも授業の開始がゴールデンウィーク明けになったという連絡があった。被災地出身の学生のことを考…

【雑考】チャリティの方法

毎朝、新聞を見るのがつらい。被災で亡くなった数が1万人を超えてしまった。そのひとりひとりには、震災がなければ続いたであろう人生があったことを考えると、本当につらくなる。 そんな中、「アンパンマン」の主題歌「アンパンマンのマーチ」がラジオでは…

【小説】「わたし」は誰なのか?

久しぶりに衝撃的な作品を読んだ気分。頭をガーンとぶたれたような衝撃ではなくて、じわじわと頭の中を侵食されていくような静かな衝撃。カズオ・イシグロの小説は、第3作目の『日の名残り』まではリアルタイムで翻訳が出る前に読んでいたものの、そのあたり…

【雑考】こんなときだからこそ…

東北地方太平洋沖地震から9日目が過ぎようとしています。テレビや新聞の報道を通して知る現実に心は痛むばかりです。亡くなった方々、その家族の方々、そして震災に遭われた方々のことを思うと、本当に言葉がなくなります。 震災後、鎌倉の街からも人や車の…

【小説】ユートピアは未来にある? それとも過去にある?

諸々の仕事に追われ、すっかりご無沙汰していました。とりあえず、一息をつける気分になれたのでブログに向かっているのですが、次のことを考えるとおちおちしていられません。きちんと計画立ててやっていかないとダメですね。いつもそう思うのですが、なか…

【音楽】サヴォイ・オペラについて

昔から音楽は好きで、タワー・レコードの宣伝コピー「No Music, No Life」そのものの生活を送ってきていて、ポップス、ロック、ジャス、クラシックなど、演歌を除くあらゆるジャンルのものを楽しんでいる。と言うか、「ながら族」なので、音楽を流しながら仕…

【講義本】アメリカ小説を読んでみよう!

最近、思うところが少しあって、アメリカの小説に関する本をいくつか買って読んでいる。それで何んとなくわかってきたのは、現在は、「イギリス」と「アメリカ」に便宜的に分けることが多いものの、そんなにうまくは仕分けすることができないのでは…というこ…

【歴史】『オリヴァー・トウィスト』のフェイギンを理解するために

チャールズ・ディケンズの『オリヴァー・トウィスト』という作品の基本構造が「対照」であることは、ほんの少し注意深く作品を読んでいるとすぐにわかる。簡単にいえば「善と悪」が対照されていて、大枠では「〈善〉の世界と〈悪〉の世界」の対比になってい…

【報告】2010年の業績(←もっと頑張らねば…)

新年を迎えたと思ったら、あっという間に1月も終わってしまいました。時間が経つのは本当に早いもの。 先週、木曜日に卒論を書き終えた4年生が謝恩会を開いてくれました。いろいろとあった学年だけど(ゼミ生の「多様性」については抜群の学年でした)、こう…

【エッセイ】「永遠の少年少女のための文学案内」

今年度の授業ではディケンズの『オリヴァー・トゥイスト』をよく取り上げたことや、ユーリカ・プレスから出た復刻「子どもの文化史」の日本語解説を書いたこともあって、「子ども」は今年度の私の個人的なテーマでもあった。ただ、この「子ども」というのは…

【雑考】「仕事」について考える

今日の『朝日新聞』の読書コーナーに、以前でブログで紹介した京都の恵文社一乗寺店という本屋さんの店長の記事が載っていました。これまでにも色々なメディアで取り上げられているので、別に改めて驚くこともないのですが、大手の新聞に笑顔の店長の写真が…

【小説】本物のダンディとは?

新人物往来社という出版社から、なかなか興味深い小説にシリーズが刊行されている。「20世紀イギリス小説 個性派セレクション」と題されたこのシリーズ、すでに5冊中の1〜3冊目が刊行され、かの柴田元幸先生も「このシリーズ、絶対いいと思います!」と帯に…

【小説】「ささやかな日々、平凡な仕事」

年末、指導教授のお宅でオーウェルの読書会があった。今回は、小説としては『ビルマの日々』に続く第2作目の『牧師の娘』。私がレポーター。Modern Classics Clergymans Daughter (Penguin Modern Classics)作者: George Orwell出版社/メーカー: Penguin Cla…

【音楽】「ハレルヤ、ハレルヤ、…ハレクリシュナ、ハレハレ」

あけましておめでとうございます。年が明けました。2011年です。今日の授業で、ウィリアム・モリスの『ユートピアだより』の話をした際、当然のようにエドワード・べラミーの『顧みれば』にも触れました。モリスのこの作品も、べラミーのものも、二つとも21…

【音楽】親の七光?

クリスマス・イヴです。確か、このブログを書き始めたのが去年のクリスマス時期で、カフェ・アプレミディのCDを聴きながら書いていたのを何となく覚えています。1年になりますが、根気がない性格ながら良く続いたものと自分でも思います。これからの1年、ま…

【紹介本】『動物農場』を読んでみよう!

久しぶりの書き込みになりました。卒論の締め切り(もちろん私ではありません)、大学の紀要原稿の締め切り(こちらは私です)が立て続けにあったこともあり、授業の準備も含め、ここ1,2週間は怒涛のように流れ去っていった感じで、自分でもあまり記憶があ…

【映画】詩人キーツの映画

なんともビックリですが、イギリスの詩人ジョン・キーツを主人公にした映画が公開されています。あの『ピアノ・レッスン』のジェイン・カンピオン監督の『ブライト・スター』です。 キーツはイギリスのロマン派を代表する詩人のひとりで、イギリス文学史など…

【入門書】ブロンテ姉妹の入門書

以前、あるベテランの先生が「授業で小説のあらすじを説明するのは難しい」とおっしゃっていたのを覚えています。そのときには「そんなもんかなあ…」と思っただけでしたが、いざ自分でも文学関係の授業を担当するようになって、この先生のそんな言葉を時どき…

【小説】この推理小説はフェアかアンフェアか?

とうとう読みました。アガサ・クリスティの『アクロイド殺し』。田村隆一ファンなので古い方のハヤカワ文庫で読んだのですが、ここでは入手しやすい方を紹介します。アクロイド殺し (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)作者: アガサクリスティー,Agatha Christi…

【小説】近未来は「現実」となったか

生活している場合はもちろん、通勤・通学の途中などで通りがかるだけでも、ここ数日の横浜には何だか物騒な感じを覚えてしまうのではないか。窮屈な、と言っていいかもしれない。横浜がAPECの会場になっているからだ。駅のコイン・ロッカーやごみ箱は使用で…

【美術展】横須賀美術館「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展

タウン情報新聞を読んでいたら、横須賀美術館で下記のような展示をやっているのを発見しました。美術館のホームページから転載します。「ラファエル前派からウィリアム・モリスへ」展――英国ヴィクトリア朝芸術の精華――(期間は、2010年10月30日(土)〜2010年…

【ブックガイド】京都の本屋さんより届いたブックガイド

みなさんは、どのようにして読む本を選んでいますか? 授業中に紹介された本、レポートを書くのに調べていたら検索で出てきた本、あるいは恋人や友達が教えてくれた本…。パターンはいろいろだと思いますが、結構、便利に使えるのが「ブックガイド」と呼ばれ…

【挿絵】イギリスの動物木版画

先のブログにも書いたが、このところ、ヴィクトリア朝のイギリスについて授業などで話をすることが多くなった。そのための準備として、ディケンズやサッカレーなどの小説の他に、『パンチ(Punch)』や『ロンドン挿絵付新聞(London Illustrated News)』な…

【小説】ヴィクトリア朝の孤児の物語

最近、ある学生さんから、「今、先生の中ではヴィクトリア朝がブームなんですか」と言われました。確かに、授業のテーマは19世紀の小説や社会背景のことばかりだし、春の英文学会でニューマン、秋のフェリスのシンポジウムではサミュエル・バトラーとエドワ…

【シンポジウム】フェリス女学院創立140周年記念英文学科シンポジウムのお知らせ

下記の要領でシンポジウムを開催することになりました。「社会改良」をキーワードに、文学と芸術の分野から19世紀ヴィクトリア時代について話をします。 場所は、港の見える丘公園や外国人墓地などがある、いわゆる古き良き横浜の面影を残す山手キャンパスで…

【雑考】洋書バーゲンフェアに行ってきました

またまた久しぶりの書き込みになります。忘れていたわけではないのですが、尋常ではない忙しさに、風邪をこじらせてしまったりもしていて、なかなか書けないでいました。今回も「雑考」になってしまいます。 昨日、18世紀の英文学関係の研究会で専修大学の神…

【学会参加報告】フォークナー協会大会のシンポジウムに行ってきました

久しぶりの書き込みになります。このところ、妙に忙しくなって、なかなか時間が取れませんでした。 昨日、フォークナー協会の大会のミステリーのシンポジウムに行ってきました。その報告を簡単にしたいと思います。 小池滋先生と佐々木徹先生のお話は、期待…

【入門書】適切な「入門書」とは?

今日、神楽坂の学会事務局の用事を済ませ、また神田神保町に寄って帰りました。しかし、今日は暑かったにも関わらず、これといった本もなく、久しぶりに手ぶらで帰りました。そのときに立ち寄った三省堂の「イギリス文学」のコーナーに下記の本が平積みにさ…

【学会情報】ミステリーのシンポジウムが開かれます。

ようやく涼しくなってきた感じで、腰を据えて本でも読んでみようという気持ちになってきます。そう思うと、後期が始まってしまいました…。そんな読書の秋に読むべき本を教えてもらえそうな学会情報を紹介します。日本ウィリアム・フォークナー協会の第13回全…

【小説】イギリスの「困難な時代」

ディケンズの『困難な時代』を読み終わった。今回、びっくりしたのは、作品の内容というよりも、原書がとても安く買えたこと。読んだのはWordsworth Classics。安いから買ったのだけど、値段は何と260円。円高とはいえ、信じられない安さ…。Hard Times (Word…